その12 譜面改革〜譜面を12.9インチiPad Proで見始めた事のメリット&デメリット〜

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12.9インチのiPad Proで譜面を閲覧

ベーシストの岸徹至です。

昨年、2019年の夏頃からライブやコンサートの仕事で12.9インチのiPad Proで譜面を見る…という事を始めました。コンサート等ではとても便利に使えていたiPad。2020年の1月の

「CHESS THE MUSICAL」

で初めてミュージカルの現場でも使ってみました。今回はざっくりと

「紙の譜面からiPadの譜面になった事のメリットとデメリット」

を個人的な感想を交えつつざっくりとまとめてみました。これはひょっとしたらプロのミュージシャン以外にはほとんど意味のない記事かもしれませんので…その点、ご容赦くださいませ!

12.9インチのiPad Proで譜面を閲覧

まず結論から言うと…iPad、非常に便利です。コンサートやライブ、ミュージカル、どのジャンルの仕事でも譜面の準備にかける時間が短くて済むようになりました。

我々ミュージシャンの仕事ではしばしばリハーサル前、もしくは本番前に譜面が送られて来ます。以前はほとんど郵送でしたが最近はその方法が変化しつつあります。主にPDFデータの譜面が以下のような方法で送られてきます。

・PDFデータの譜面をDrop box,Googleドライブ等で送信

・メール等メッセージにFire storage等のリンク先を貼り付けて送信、個々に譜面をダウンロード

・LINEやメールに直接PDFデータの譜面を添付

・プリントアウトされた紙の譜面を郵送

Drop boxに送られたPDF譜面

LINEで送られたPDFの譜面データ

方法は様々ですが2020年現在、PDFのデータのやり取りが非常に多いです。紙で郵送される時にも別途PDFのデータが送られてくる事がほとんどです。

譜面が完成→プリントアウト→郵送…

と言う手間がかかるのに比べてデータを直接送る方が圧倒的に早い…のです。それに画像や動画に比べて譜面のデータは非常に軽いので直接ダウンロードするのにも時間も容量もストレスがない事…等がデータでの譜面のやりとりが全盛になっている事の理由の一つでしょう。

 

さてそんなPDFで譜面のやりとりをする事が多くなったここ数年、直接送られてきた譜面を大画面のiPadで読めたら便利だろうなあ…と思っていました。知り合いのミュージシャン達が徐々にiPadでの譜面閲覧にスライドする中、導入時期を検討していましたが昨年2019年の夏、ついにiPad Pro12.9インチを導入したわけです。

 

まずはメリット

・全ての譜面を持ち歩ける(例えば数百冊の曲集や教則本を同時に持ち歩くことすら可能)

・プリントアウトの手間、紙の無駄遣いがない(1日だけのライブやコンサートのために大量の譜面をプリントする必要がない)

・書き込み、注釈付が簡単(Apple Pencilを使って鉛筆、消しゴム、蛍光ペン、カラーペン、修正液等の機能がキレイに簡単に使用可能)

・曲順の変更、曲目の追加等へ対する対処が簡単(非常に簡単な操作で譜面の順番等変更ができる)

・譜面灯が無いような暗い場所でも画面が明るいので読みやすい(ステージは照明が暗くなる事も多いので…)

・譜面をフットスイッチでめくることができる(譜めくりのタイミングを考えたりレイアウトを変える必要が無い)

 

ざっとこのくらいのメリットがあるかと思います。ではデメリットはと言うと…

 

・iPadに不具合が発生した時に対処が困難(例えば急に電源が落ちたり…)

・譜面を横に3枚並べる等、横に長く譜面を広げられない

・バッテリー残量を気にしないといけない

・常に液晶画面を見ているので目にかかる負担が大きい

・通信状態で使っていると着信通知等で画面が見づらくなる事がある

・iPadを忘れると終わり…または落として割れると終わり!

こんな感じでしょうか。では個別に解説いたします。


 

・全ての譜面を持ち歩ける

大量の譜面を同時に持ち歩けるのは本当に便利です。少し時間がある時にエチュードでも練習しようか…と考えた時に…個別に持っていくなら何冊分にもなるような譜面もストレスなく持ち歩けます。コントラバスのエチュード、自分で採譜したエレキベースのコピー譜、ホルンのコープラッシュ、チューバのJon Sassのエチュード…と…様々な楽器の様々なエチュードや楽譜をどれだけ持ってても重く無いですからっ!!(笑)そこにプラスして自分の所属バンドの全ての譜面、仕事で使う譜面たちを全て入れていても容量的には全然大したことありません。現在の僕の使っているアプリ

「for score」

の容量は1ギガ未満です。写真や動画に比べて圧倒的に軽いですね。

動画編集ソフトのLumafusion、写真アプリと比べると圧倒的に軽い譜面閲覧ソフトの「forscore」

・プリントアウトの手間、紙の無駄遣いがない

1日だけのコンサート、ライブはたくさんありますが…このために譜面をプリントするとなると…少なくてもA4で10枚程度、多いときは2、30枚の譜面をプリントすることがあります。これはエコか…と言われればやはり大変に紙の無駄遣いだと思われます。資源の節約にもなるのかな?と思います。

・書き込み、注釈付が簡単

だいたい紙の譜面に書き込むときは鉛筆が9割だと思います。どうしても間違えたく無いような箇所に注意喚起の為に蛍光ペンでマークをする事もありますが…ペンで書き込むと消すのが大変なのであまり頻繁にはペンは使いませんが…iPad上だと書き込みも簡単ですし修正も簡単です。修正が容易…と思うと僕のように字が鬼のように汚い人間でも書き込みが増えますねー。

簡単に書き込めますし消せます

・曲順の変更、曲目の追加等へ対する対処が簡単

これはミュージカル等の製本をする譜面以外はあまりメリットはないかもしれませんが…稽古の途中で急に新しい譜面に差し替えられたりする時に製本が済んでいるとページの入れ替えがとても面倒なのです。大抵の場合は両面印刷にしているので差し替えられる譜面だけでは無く、その前の曲の最後のページをどう処理するか…といった問題が生じますがiPadならページレイアウトを全く考える事なく譜面の並べ替えが出来るのでとても重宝します。

・譜面灯が無いような暗い場所でも画面が明るいので読みやすい

ステージ上は照明が暗い事も多いです。またミュージカルのピットの中では譜面を照らす譜面灯が暗い事も良くあります。そんな時にはiPadは明るさがあるのでどんな時でも非常に譜面が見やすいです。

・譜面をフットスイッチでめくることができる

これがもしかしたら一番大きなメリットかも知れません。ベースは基本的に両手が塞がっているので譜面をめくれるような休符のタイミングや開放弦のタイミングを考える必要があります。個人的には長年の経験からそういった譜めくりポイントを見つけること、その譜めくりポイントの位置をずらしてレイアウトをし直すことには非常に長けているのですが…もはやそういった長年にわたる製本スキルも全く必要が無くなるくらいに譜めくりが楽です。この製本や譜めくりのタイミングを考える時間がなくなった事も大きな変化です。

こんなペダル達を使って足で譜面がめくれます


 

対してデメリットです。

・iPadに不具合が発生した時に対処が困難

例えば急に電源が落ちたとして…iPhoneにしてもパソコンにしてもiPadにしても…再起動にはそれなりの時間がかかります。同じような事故だとして例えば紙の譜面が何かの拍子に床に落ちたとしても拾い上げて演奏に復帰するまではおそらくわずか数秒です。しかしiPadが再起動するにはおそらく1分近くはかかるでしょう。このトラブルがもし起こるとするならシビアな現場では使えません。実際にミュージカルの現場でiPadの電源が落ちる…と言う事故は起ったそうです。新しい製品には危険性と利便性、両方が付きまとうと思います。

しかし一度の事故で飛行機を使わなくなっていたら航空機を利用する利便性が無くなっていたのと同じように

「なぜ電源が落ちるのか?」

を良く調べて…今後どうしたらその様な事故が起きなくなるか?をしっかり考えて行く事こそが大切だ…と僕はー思っています。

iPadの電源が落ちやすい原因の一つには電圧の不安定な電源から電源供給をしているため…と言うケースがあるそうです。劇場の電源は照明等、色んな要因によって安定しない事も多いようです。むしろどこからも電源を取らずに充電をしっかりして使用する、もしくはモバイルバッテリーのような安定した電源を利用した方がトラブルは少ないのかも知れません。

とはいえ何が起こるのかはわかりません。先日の「CHESS」で初めて15公演ほどの長さのミュージカルでiPadを使用しましたが…いざという時のためにプリントアウトした譜面を用意しました。実際、iPadが落ちたりはしませんでしたが…譜面灯の電球が切れたり…なんて事も起きたりします。予備の譜面灯の電球を用意しておくのが当たり前のように予備の譜面を用意しておくのが現状でiPadを使う中では一番大きな保険になるのかな?と思います。そして便利なことにiPadで注意書きを入れた譜面をプリントアウトすることは非常に簡単なのです。

書き込みをしたiPadの譜面をプリントアウトすると非常に見やすい紙の譜面が…!!

・譜面を横に3枚並べる等、横に長く譜面を広げられない

ほぼA4のサイズのiPadを縦に使っているのですが…紙の譜面だと当たり前に出来るA4を縦に二枚…つまりはA3のサイズの譜面…と言うことが出来ません。まして横に三枚…という事はほぼ不可能です。一目で目に入る情報が紙の譜面に較べると少ない…というのがデメリットの一つです。

・バッテリー残量を気にしないといけない

紙の譜面にはなかった概念

「バッテリー残量」

というものがiPadにはあります。先ほども書きましたが外部電源を取りながら使う方がiPad本体の電源が急に落ちる可能性があるので…iPad本体の充電状況、フットスイッチの電池残量にも気を使う必要が出てきます。とはいえ朝100%の充電状態で出掛ければ昼夜のミュージカルをやっても50%くらいの電池残量は余裕で残ります。自宅で充電を忘れて現場に到着、充電器も忘れて来た!!!…とかなるとバッテリー残量は相当ヤバイ気はしますが!!(笑)

・常に液晶画面を見ているので目にかかる負担が大きい

これは少し長い時間をかけないと自分の目にどのくらいの負担がかかっているのかわかりません。何せ仕事中も譜面を液晶画面で見続けて…休憩時間にはiPhoneをとりだし…家に帰ったらYouTubeやNetflixを観てる…と言う生活を今後何年も続けていくとしたら…いや、職種によっては既にそんな方もいらっしゃるのでしょうね。ある程度、現代のスマホ依存的な生活を続けている社会人に共通の課題かも知れませんが…どこかでバランスを取る必要があるのかな…と思います。

・通信状態で使っていると着信通知等で画面が見づらくなる事がある

これは…単純に設定の問題です!(笑)僕の iPadはWi-Fiモデル(Wi-Fi環境だけでインターネットに接続可能。もう一種類のセルラーモデルというタイプだとiPhoneと同じくSIMカードを通じて電波の届く範囲ならどこでもインターネットに接続可能)なのですが…Wi-Fiの飛んでいない劇場(梅田芸術劇場)で使っている時には特に問題なかったのですがWi-Fiの飛んでいる劇場(東京国際フォーラム)で使い始めた時にメールの着信の通知が来てしまい…画面が見づらくなる…と言う現象が起きました。これは通知をオフにするとか機内モードに設定する、Wi-Fiをオフにする…等々、対処方法はたくさんあります。単なるうっかりミスを無くせば問題ありません!!

メール着信等の通知をオンにしているとこんな事に…!!

・iPadを忘れると終わり…または落として割れると終わり!

これは本当に終わりです。通常、仕事で使う譜面は

「忘れると大変な事になる…」

と言う自覚があるためにあまり家に持ち帰りません。しかしiPadは仕事用で使いつつもプライベートでも使用もするために当然家に持ち帰ります。家に持ち帰る…という事は忘れる可能性もあるわけです。うっかり家に忘れて出かけてしまった…または途中の電車の中でうっかり落として液晶画面がバキバキに割れてしまった…となるとiPadで譜面を見る…という事は不可能になります。そんな個人的なミスでなくとも譜面台が倒れた、譜面台のネジが緩くて首(と呼ぶのかな?譜面を置いてる場所です)が倒れた…という時に紙の譜面はバサバサと落ちるだけですがiPadは…下手すると譜面台の高さ程度でも運が悪ければ割れてしまうかもしれません。やはりいざという時のために予備の譜面は大切になってくるでしょうね。

 

という事で…結論として現状でiPadで安全に譜面を見るためには

・充電状態またはモバイルバッテリー等から電源は取るようにする

・いざという時のためにプリントアウトした注釈付きの譜面を用意しておく

という事になるかと思います。今後必ず重要になってくるiPad(他のデバイスでも)による譜面の閲覧。より安全に行えるようになる事を望みます!

今後導入をお考えの方のミュージシャンの参考になれば幸いです!!

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